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飲んだくれながらフェイダーを上げたり下げたり。幕が閉まると観客が地明かりを求めます

11.21.21:55

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12.02.12:24

小説更新「澄んだ瞳で言った「みとめてあげて」」
  • [CATEGORY:芸術 COMMENT:0 TRACKBACK]

小説更新しました。「澄んだ瞳で言った「みとめてあげて」」

人間は極端な人が多くて
自分しか認めない人と
自分以外を認める人が多い。

もちろん、自分も他人も認める人もいれば
誰も認めない人もいる。

自分を認めるって難しい。

そんな話です。


 澄んだ瞳で言った「みとめてあげて」
 
作 あるとにあ
 
むかしむかしあるところに私たちが衣替えをする時期が訪れていました。そのあるところは、小さな丘がありました。その丘には何十本もの銀杏の木がありました。もちろん高い木もあれば、小さな木もあり、葉が黄色になったものもあれば、まだ、緑色のものもあります。気象学的に言うと、今年は暑かったり寒かったりしたので紅葉が遅れ気味とのことでしたが、この物語には特に必要ないので今は飛ばしますね。とにかく、いろいろな銀杏の木がありました。この丘に建つ銀杏の木たちは、その周りに住む人々にお話をする銀杏の木たちでした。夏の熱い時に人々は影を求めて銀杏の樹の下へきて涼みながら彼らの話を聞き、秋になり葉が紅葉し始めてからは話を聞きながら本を読んだり、お菓子を食べたりと、人々と銀杏たちはとても仲良く生活していました。そんな銀杏の木の中で一本だけ背も低ければ、葉もほとんど真緑で一枚だけ紅葉した銀杏の木がありました。周りの木は30センチ以上も高い樹やほとんどの葉が黄色に紅葉したものもあるというのに、その樹は樹齢の割に背も低ければ葉も緑のままでした。周りの銀杏だって、すべてが染まっているわけではありません。上が染まっているもの、右が染まっているもの、左が染まっているもの、下が染まっているもの。いろいろあります。でも、その背の低い銀杏の木は周りがそんなに染まっているというのに一枚しか紅葉していませんでした。
 
こうまで周りと違ってくると、いくら個性とはいえ、一番背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木は、周りの木がうらやましくてたまりません。周りは銀杏の木は銀杏の木としての一番の仕事をこなしているというのに自分がまるで足を引っ張っているように見えるのです。黄色の中の緑は目立たないようでとても目立つのです。しかし、どんなに努力をしたところで葉は一向に黄色くはならないし、背も大きくなりませんでした。だから、一番背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木は、自分のことを、一番のできそこないだと口に出して丘の近くに住む人々に話して聞かせていました。いつも、自分の失敗を面白く話して聞かせていた背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木は、いつもと同じような気分でその話をしていました。もちろん丘の人たちはそんなことを微塵も思ってはいませんでしたので、背が低くて登りやすい樹だよ。といった子供もいれば、鮮やかな緑だ。とその緑の葉をキャンパスにおさめた人もいました。しかし、背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木はそれでも自分のことを一番できの悪い樹だと言ってやめませんでした。
 
そんなあるとき、そんな背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木のところに、一人の女性がやってきて背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木の木陰に入って休んでいました。背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木は、いつものように自分がこの周りの銀杏の木の中で一番できそこないなんだということを話して聞かせていました。女性は静かに背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木の話を聞きいて静かに帰って行きました。その日の夜です。急に強い風が吹き始めたかと思うと突風に変わり始めまるで台風のような風に変わっていきました。その風は何十本ある銀杏の木たちの周りをぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる回って黄色の葉を引き抜いて遊んだり、その葉を拾って押し花のようにしていたり、銀杏の木を押しあいっこして突き飛ばして倒したりしました。一番背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木はそんな風から身を守りながら、朝がくるのを待っていました。実は、一番背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木は、身を守っているつもりでしたが風からすれば、葉が緑色の一葉の木が夜のせいで見えなかったのです。そのうえこの樹は背が低かったので風もそこまで降りて行きなかったのです。そんなことをこの背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木が知る由もありませんでしたが、とにかく朝が来ればなんとかなると思いながら背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木は、朝がくるのを待っていました。
 
やっと、待ちに待った朝が来ました。背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木が、辺りを見渡すと、あたりはすっかり変わってしまっていました。黄色の葉はちりじりになって地面に散らばっていました。何本かの銀杏の木は、根から倒されて地面に転がっていました。その周りに葉が散らばりまるでお墓に手向けられた花のようになってました。驚いて、口を開けたままぼうぜんとしていました。そこに、昨日やってきた女性が静かに本を持ってやってきました。女性は軽くあたりを見渡すとまっすぐ背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木の木の根元にやってきて腰をおろし本を読みはじめました。背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木は、枝を伸ばして影を大きくしてまた、いかに自分ができそこないかを話して聞かせていると静かに本を読んでいた女性はおもむろに口を開け言いました。あなたのまわりの木に葉もなければ木としての役目を終えてしまったものもいると言うのに、あんな樹の下では本なんて読めないじゃない。でもあなたはまだきちんと銀杏としての仕事をしているじゃないの。あなたでなければ木の下で読書できなかったのよ。それがあなたのいいところ。わかった?と静かに言ってまた、本に目を落として本を読みはじめました。
 
背の低く葉がほとんど紅葉していない銀杏の木は、はっと口を閉じました。そして、そのあとすぐに見事に紅葉しました。
 
END

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